古代最古の伝統医学の歴史、自然、浄化、宇宙原理を基礎とする哲学…⁉
『アーユルヴェーダ』とは一体どのようなものだと思いますか?
三大伝統医学と歴史
世界には三大伝統医学といわれる医学がある。
- 中国医学
- ギリシア医学(ユナニ医学)
- アーユルヴェーダ
古代最古の医学と言われているアーユルヴェーダ。
中国医学を初めギリシア医学(ユナニ医学)、チベット医学など東洋の伝統医学だけでなく古く西洋医学にも大きな影響を与えたとされています。これらの歴史を辿ってみましょう。
中国医学
前漢の時代、紀元前2世紀頃に中国医学は確立されました。まず、最も古い医学的な文献は「黄帝内経」です。
この文献には、体のバランスを重視する考え方や鍼灸、漢方薬などの治療法が記述されています。さらに、中国医学は長い歴史を通じて発展し、さまざまな文化や哲学、実践を取り入れながら進化しました。
ギリシア医学
古代ギリシア医学は、紀元前5世紀頃に「医学の父」と呼ばれるヒポクラテスの活躍で大きく進歩しています。彼は病気の原因を自然な要因や体内のバランスの乱れ等があるとし、治療にはバランスの取れた食事や十分な休息、そして自然の力を利用することを提唱しました。
アーユルヴェーダ
古代インドの哲学と医学の統合されたアーユルヴェーダは人間の身体、心、精神のバランスを整えることを目的としています。さらに、その歴史をさかのぼること約5000年以上も前の紀元前15世紀から紀元前8世紀頃に成立したとされており、古代の聖典であるヴェーダに含まれる知識や哲学が基になっています。
ブッダとジーワカ医師
ブッダが活躍した紀元前6世紀ごろ、ブッタを治療したとされる医師ジーワカは、現在でも最も偉大なアーユルヴェーダ医師として尊敬されています。
現に、古代アーユルヴェーダの古典であるチャラカ・サンヒター(内科)とスシュルタ・サンヒター(外科)によって、伝統医学の歴史が伝えられており、これらの古典には治療法、予防法、生活法、哲学が記されています。
スリランカでのアーユルヴェーダ
スリランカのアーユルヴェーダの歴史は非常に古く、数千年にわたりさかのぼります。まず、古代のスリランカにおいて、アーユルヴェーダは王室や一般の人々によって広く実践され、文化や日常生活の一部として深く根付いていました。さらに、インドからの影響を受けながらも、スリランカの地域の植物、気候、文化と密接に結びついて発展しました。
しかし、中世以降、スリランカは植民地支配の影響を受け、西洋医学が導入されるなかでアーユルヴェーダの地位は一時的に後退しましたが、現在では再び注目を集めています。
そして現在では、スリランカ政府や民間の団体は、アーユルヴェーダの復興と普及を支援しており、この古代の医学システムは現代の健康や現代医療においても重要な位置を占めています。
アーユルヴェーダの語源と哲学
語源
『Ayurvedaアーユルヴェーダ』はサンスクリット語で「Ayur」と「Veda」の2つの語の組み合わせで構成されています。「Ayur(アーユル)」は「寿命・生命力」を意味し、「Veda(ヴェーダ)」は「知識・科学」を意味します。
アーユルヴェーダは「生命の科学」または「生命の知識」と呼ばれています。
つまり「生きるための法則」や「良く生きるための教え」と言い換えられます。
哲学
「大宇宙」と「小宇宙」は、身体と宇宙の相互関係を表す概念です。これらの概念は、古代インドの哲学や医学の伝統に根ざしています。
大宇宙(マクロコスモス)
大宇宙は、宇宙全体のことを指します。アーユルヴェーダでは、宇宙が五大元素(空、風、火、水、地)から成り立っており、宇宙全体のエネルギーを構成しています。大宇宙の法則やエネルギーは、私たちの身体や健康にも影響を与えると考えられています。
小宇宙(ミクロコスモス)
小宇宙は、個々の人間の身体や精神を指します。人間の身体もまた五大元素から成り立つと考えられており、それらのバランスが健康を維持する重要な要素とされ、身体や心の不調は、大宇宙のエネルギーの不均衡や乱れによって引き起こされると考えられています。
パンチャマハーブータ(五大元素)
アーユルヴェーダでは、宇宙と人体は五大元素(空間、風、火、水、地)から構成されていると考えられています。、これらの元素は身体と心の機能を調整し、バランスを取ることが重要であるとされています。
トリ・ドーシャ(三つのエネルギー)
トリドーシャ理論によれば、身体と心の機能は、ヴァータ(風)、ピッタ(火)、カパ(水)の三つのエネルギーによって制御されています。バランスのとれた状態が健康であり、これらのエネルギーの不均衡が病気や不調の原因となると考えます。
アーユルヴェーダの生活様式(ライフスタイル)
アーユルヴェーダでは、健康を維持するために、適切な食事、運動、睡眠、精神的なバランスなどの生活様式が重要だと考えられています。そのため、個々の体質や季節に合わせたライフスタイルの調整が奨励されているのです。
プラナ(ライフエネルギー)
プラナと呼ばれるライフエネルギーが存在し、全ての生命活動をサポートしています。したがって、この流れが妨げられると、身体や心の不調が引き起こされると考えられています。
アーユルヴェーダの3つの目的
1. 健康な人の健康維持・保持する予防医学
病気を寄せ付けず、老化を遅らせ、長寿を追求していき、さらに、個体の免疫抗体を高めるのがアーユルヴェーダの方法です。
2. 病気に陥った人の自然治癒力を引き出す医療技術
アーユルヴェーダは人間が従来より持っている自然治癒力を最大限に引き出します。また、出来るだけ自然の法則に従い自然な方法で病気を取り除き、完全治癒を得る方法を追求しています。
3. 身体のみならず精神・意識を重要視する治療医学
アーユルヴェーダは身体的側面だけでなく、精神的、霊魂的を同時に考慮し、独自の思想を主張しており、医学的側面と哲学的側面を備えた統合科学とも言えます。
「健康な体が病気になったのであるから、逆に病気の体が健康になることも可能なのだ」と考えるのがアーユルヴェーダの身体感である。
アーユルヴェーダの知恵 高橋和巳
本来の自分へ
アーユルヴェーダは、宇宙と人間の緊密な関係を理解し、そのバランスが健康と幸福に不可欠であると考えます。ゆえに、私たちの身体、心、精神は、宇宙のエネルギーや自然の法則と深く結びついています。そのため、大宇宙と小宇宙のバランスが健康を維持するための鍵となります。
アーユルヴェーダは、この理念に基づいて、個々の状態やニーズに応じて、食事、ライフスタイル、マインドフルネス、ハーブ療法、ヨガ、マッサージなど、さまざまな手法を組み合わせて、本来の自分の健康でバランスの取れた状態への回帰することが最大の目的です。
つまり『本来の自分を取り戻す医学』とも言えるでしょう。